【Part 6:ブラック部活って...なんじゃらほい】
こんばんちは (・`ω・)
会社の夏休みも終わり、本日から仕事再開です。 ブラック部活についてつらつらと書きつづってまいりましたが、 今回を含め、残り2, 3回で終えられればな、というのが目標です。
今回はいつも以上の「素早い斜め読み」がオススメです。
目次
- 【振り返り】 問うべき問いも決まり、方針も決まり、 教員、生徒、保護者についてのデータ集めと、その検証作業を進めよう!!というところまで終えておりました。 ちなみに絞り込んだ問いはこちら。
- 【先生について】データから見るトレンド
- ざっくりまとめ【先生編】 一部の教員へ、部活を含めた労働負担が偏っており、 「組織内格差」が存在する可能性がある。30才未満で運動部顧問を持つ教諭の実労働時間は、控えめに見て平均75*時間。
- 【生徒について】データから見るトレンド
- 【保護者について】データから見るトレンド
- 参考文献リスト
【振り返り】
問うべき問いも決まり、方針も決まり、 教員、生徒、保護者についてのデータ集めと、その検証作業を進めよう!!というところまで終えておりました。
ちなみに絞り込んだ問いはこちら。
「2018年 東京の高校部活動は、顧問を持つ教員・生徒・保護者にとって、労働・賃金・活動時間・疲労度(休息)・部活から得られる効用が、持続可能ではない。例えば、ミクロの視点では、現行職員の健康(心と身体)、生徒の健康(心と身体)、教員志望者数への影響、部活動における怪我や事故、保護者の期待と子供へ提供されるもののアンマッチが起こるのではないか」
データって、例えば、それぞれの主体の労働・賃金・部活動時間、疲労度(休息)、健康(心と身体)、怪我や事故、とかそういったものを数値化したり視覚化したものです。
今回は気になった部分を引用しました。
参考文献に利用したデータをもとに、見解・検証を述べていくのは、次回に先延ばししたいとおもいやんす。
サボりです。肩こりです (´・ω・`)
※以下、くれぐれも「ホンマかいな?」の精神をお忘れなく。
詳細に読みたいぜ、詳細なデータを見たいぜ、というマイノリティーな変わった方は、
参考文献まで、じっくり御参照下さい。
最初に述べておきますと、「東京都だけに絞ったデータ」というのは極めて限られておりました。そのため、便宜的に全国規模で集められたデータを使用し、「東京では全国平均が反映されている」という、控えめな仮定を置きます。
推定をして数字を作るという方法もありますが、それはまた今度。
【先生について】データから見るトレンド
文部科学省の「高校教員の勤務実態」(1)を使っています。
※参考文献リストは最下部。
全国の高校の高校をカバーしているため「東京だけ抽出」というのは出来ないのですが、
発行者の信頼性、サンプル数を加味して敢えて利用しています。 良くも悪くも、「平均値」が出ているので。
「一応高校教員を全員カバーしてるんだな、傾向は捉えていそうだな」 ぐらいに御認識下さい。*しかしながら部活問題を考察するためのデータって、ものすごく不足しています。これって、研究者からしたら、とても価値があることなんです。だって開拓者になれますから。
教員勤務実態調査(平成28年度)の集計:文部科学省は使用しておりません。
対象が、「小学校 400 校、中学校 400 校(確率比例抽出により抽出。)に勤務する教員」だからです。
ざっくりまとめ【先生編】
一部の教員へ、部活を含めた労働負担が偏っており、 「組織内格差」が存在する可能性がある。30才未満で運動部顧問を持つ教諭の実労働時間は、控えめに見て平均75*時間。
特に休日の有無(休日の残業・持ち帰り)含め、一部の教員に負担がかかっている。 月の残業時間が、80時間、90時間に達するケースは十分にありえる。
中学の先生の過労がメディアに取り上げられておりましたが、高校でも同様の負担を追っている方もいらっしゃるでしょう。
逆に、年齢50歳以上、顧問なし、且つ管理職の場合、残業時間が20時間〜程少なくなります。疑い深くみれば、そのような管理職にとっては、「部活動時間を減らすために変化を起こすインセンティブ」は無いのかもしれません。
だから鈍い...のかな。
部活による負担(特に休暇の侵食)は線形モデルで多変量解析にかければ有意に出ると予想します。
①[勤務日残業時間+持ち帰り時間*22勤務日]
②[休日残業時間 +持ち帰り時間*4勤務日]
※日曜日は残業・持ち帰り無しと仮定。
但し、下記の通り、出退勤管理の方法には疑問が残るため、正確な数値とは言えないのです。 目視で確認て。。。以下引用。
「出退勤管理の方法」 (1)
「報告や点呼、目視などで管理職が出勤を確認している」という学校が51.7%、 「出勤簿への押印などで出勤を確認している」30.3%となっている。 「タイムカードなどで出勤の時刻を記録している」などの厳密な管理を行っている学校も1割弱存在する。 退勤時刻の管理については、
「報告や点呼、目視などで管理職が退勤を確認している」という学校が一番多いものの(58.0%)、 「とくに何も行っていない」38.7%がつづき、退勤時刻と出勤時刻では、管理の方法が異なっている
部活もそうですが、「そもそも適切な労働管理がされていない」可能性が高いですね。
悲観ストーリーでは、真の残業時間は更に多い。楽観ストーリーでは、多めに見てこの数字、といったところでしょうか。
顧問の割合
「運動部の顧問をしている」55.0%、
「文化部の顧問をしている」30.0%、
「顧問はしていない」9.0%、
「無回答・不明」6.0%。
何かしらの顧問をされている方は、約8割。
外部指導員の浸透は、まだまだ先の話になりそうです。
お給料については、こちらのデータ
「教育職給料表」(2)
年功序列型であり定期的に昇給。リンク先で、発表されている給与テーブルがあります。
ケース①:正確な出退勤管理に基づき、残業無し、休暇を定期的に取得している。
ケース②:正確な出退勤管理がずさん、30才未満で運動部顧問を持つ教諭。
同じ東京都の高校でも、上記のようなケース①、②を比較した場合、
時間給換算では、「給与格差」が生まれている可能性が見えますね。
疲労度 についてはこちら
「平成22年度 教育職員に係る懲戒処分等の状況について」(3)
- 資料14 病気休職者数等の推移(平成13年度~平成22年度)
- 資料15 病気休職者の学校種別・年代別・性別・職種別状況
- 資料16 教育職員のメンタルヘルスの保持等にかかる取組状況(まとめ)
- 資料17 教育職員のメンタルヘルスの保持等にかかる取組状況について
「教員のメンタルヘルス対策について」(4)
精神疾患に依る休職者数は増加傾向、 精神疾患による休職教員の約半数は、所属校への勤務後2年以内に休職。 一般企業と比べても疲労度は高く、 上司・同僚への相談などがしにくい感じている人が多い。
教員全体のお話ですね。過剰な労働時間が精神疾患に影響を与えている可能性はありますが、それ以外の場面での生徒とのかかり自体が原因かもしれません。
部活と直接リンクするデータではないですね。
教員の志望者数推移
「平成27年度公立学校教員採用選考試験の実施状況について」(5)
ふむふむ、採用者数については増加したようですね。この流れを考えるのは面白そうです。
皆さんは、このような労働環境の中、何が採用者数の増加につながったとお考えでしょうか?
【生徒について】データから見るトレンド
これも中々データが揃っておりました。
「子どもの土曜日のすごし方はどうなっているか 」(6)
中学生で 54.2%、高校生では 64.5%が土曜日に通学しており、その大半は学校で部活動をしている。 しかも活動日は月4回以上が多い*。それでは、どんな土曜日のすごし方を望んでいるので あろうか。子どもたちは土曜日の 「 授業 」 を望んでいない。 月4回すべて望む者は小・中学生で4~5%、高校生で8%にとどまる。月2回を含めても3割弱から4割弱である。 6割から7割の者は 「 すべて休み 」 を望んでいる。
*下線部は追記
イコール顧問の方が同量の時間を過ごされているわけですな、ふむふむ。
「ゆとりがない子供たちの放課後」(7)
中学、高校にかかわらず、「忙しいと感じ」「もっと休みたい」と考えている割合は非常に多い。
これは部活のせいだとは言い切れませんし、その可能性も捨てきれません。
「子どもの生活時間に与える母親の影響 」(8)
まとめにかえて
(ただし)従来の生活時間研究は、成人を対象とする調査が主体で、子どもを対象とするものは少なかった。 総務省統計局が 1976 年以来、5年ごとに実施している生活時間調査である「社会生活基本調査」では、 10 歳以上の子どもについても調査そのものは行われているが、子どもを中心とした分析による成果は、とくにあげられてはいない。
一方で、家族と教育については、教育格差が問題となっていることもあって、これまでにも多くの研究が行われてきており、 現在も行われつつある。これらの研究は、親の持つ経済的資源や文化資本、学歴資本などが、子どもの教育達成にどのような影響を持つかを明らかにしてきた。 けれども、子どもの生活時間調査が極めて少ないこともあって、時間資源については、とくに計量的研究においては、ほとんど扱われることがなかった。本章でみてきたように、時間資源の使い方は教育と深くかかわっている。
ここで、時間資源という言葉が出てきました。
パレート効率を探る過程で、本ブログでもほぼ同じ内容が記載されています。
アプローチは悪くはなかったようです。
「第6回学習指導基本調査 DATA BOOK(高校版) [2016年]
第7章 教員の勤務実態と意識 」(9)
教員の約半分は、部活動を負担だと感じている。
文字通り、本当に「半分」なら、もう半分は負担に感じていないと。
コップ半分に入っている水は、「半分も」でしょうか、「半分しか」でしょうか。
【保護者について】データから見るトレンド
残念ながら、部活に対する保護者の傾向を捉えられるようなデータが見つかりませんでした。 取り扱われているデータはほとんど学習時間・学歴に関連するもの*であり、部活動から間接的に受ける影響等の研究は活発ではないようです。
上記「子どもの生活時間に与える母親の影響 」でも言及されている通り、
子供の時間資源投入に対する効用から受ける2次的影響、というのは
研究として、まだまだ整備されていないようです。
教員のデータからも分かるように、教員でさえも整備されたデータ(特に部活関連)は手に入れにくいことを考えると、保護者が抱えるデータがあまり見受けられないのは、需給の観点からは致し方ないのかもしれません。
*例:保護者の学歴による子供への学習影響、一緒に過ごす時間、
「第2回 放課後の生活時間調査
-子どもたちの時間の使い方[意識と実態] 速報版 [2013]
小・中・高校生の特徴的な生活時間」(10)
部活動の加入率は、受験直前の学年である中3生、高3生を除くと、中1~2年生は9割前後、高1~2年生で7割台と高い。第1回調査と比較すると、高2生の加入率が増加しているが、その他の学年ではあまり変化がみられない。 土曜日の通学回数は、小学生の7~8割が「ない」と回答しているが、中1・2生、高1・2生では約7割が通学している。その理由と回数をみると、中学生の約6割、高校生の約4割が「部活動の練習や試合」で月「4回以上」通学していると回答している。
こちらも上記の推測同様、同じペースで先生はお休みが浸食されている、とも読めますね。善し悪しは別として。
「高校データブック 2013 │ベネッセ教育総合研究所」(11)
部活動への参加状況は、男子よりも女子のほうが文化部に参加する比率が高い。 活動日数は、運動部は「5日」〜「7日(毎日)」という回答が9割を占めるのに対し、文化部は「ほとんど活動していない」〜「7日(毎日)」まで回答にばらつきがある。また、「部活動に参加している」生徒は、「部活動に参加していたがやめた」生徒や「部活動に参加していない」生徒と比べて、平日に家庭学習を「ほとんどしない」の比率がもっとも低い。
ふむふむ...。運動部と文化部の差がありそうですね。
部活別(球技、演劇、吹奏楽等)のデータなんて、夢のまた夢な気がしてきました。
参考文献リスト
以下、参考文献リスト
(1) 平成18年度文部科学省委託調査研究 教員勤務実態調査(高等学校)
URL http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/07/05/1308071_2.pdf
〈2018年8月21日時点〉P.10-P.53.
Benesse教育研究開発センター
(2)教育職給料表
URL http://www.saiyou.metro.tokyo.jp/saisin_kyuuryouhyou.html
〈2018年8月21日時点〉P.1-P.5.
東京都人事委員会
(3)平成22年度 教育職員に係る懲戒処分等の状況について
URL http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1314343.htm
〈2018年8月21日時点〉
資料13 病気休職者を除く分限処分の処分事由一覧
資料14 病気休職者数等の推移(平成13年度~平成22年度)
資料15 病気休職者の学校種別・年代別・性別・職種別状況
資料16 教育職員のメンタルヘルスの保持等にかかる取組状況(まとめ)
初等中等教育局初等中等教育企画課
(4)教員のメンタルヘルス対策について
URL http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/buka/fukurikosei/mental_health.htm
〈2018年8月21日時点〉
東京都教育委員会
(5)平成27年度公立学校教員採用選考試験の実施状況について
URL http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1380718.htm
〈2018年8月21日時点〉
(6)子どもの土曜日のすごし方はどうなっているか
URL http://berd.benesse.jp/up_images/research/2015_houkago_06.pdf
ベネッセ教育総合研究所 第2回放課後の生活時間調査報告書(2015)
〈2018年8月21日時点〉
明石 要一(千葉敬愛短期大学 学長)
(7)第57回「ゆとり」がない子どもたちの放課後-多忙な子どもたちの生活時間を考える-2014年09月22日 掲載
URL http://berd.benesse.jp/shotouchutou/opinion/index2.php?id=4284
〈2018年8月21日時点〉
ベネッセ教育総合研究所 初等中等教育研究室
研究員 木村 聡
(8)ベネッセ教育総合研究所 第2回放課後の生活時間調査報告書(2015)
子どもの生活時間に与える母親の影響
URL http://berd.benesse.jp/up_images/research/2015_houkago_07.pdf
〈2018年8月21日時点〉
佐藤 香(東京大学教授)
(9)
第6回学習指導基本調査 DATA BOOK(高校版) [2016年] (9)
第7章 教員の勤務実態と意識
URL http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5081
〈2018年8月21日時点〉
第 6 回 学習指導基本調査
調査企画・分析メンバー
耳塚寛明 お茶の水女子大学 教授(研究会代表)
樋田大二郎 青山学院大学 教授
山田哲也 一橋大学 教授
西島 央 首都大学東京 准教授
小泉和義 ベネッセ教育総合研究所 副所長
邵 勤風 ベネッセ教育総合研究所 主任研究員
吉本真代 ベネッセ教育総合研究所 研究員
佐藤徳紀 ベネッセ教育総合研究所 研究員
沓澤 糸 ベネッセ教育総合研究所 特任研究員
(10)第2回 放課後の生活時間調査
-子どもたちの時間の使い方[意識と実態] 速報版 [2013]
小・中・高校生の特徴的な生活時間
URL http://berd.benesse.jp/up_images/research/2014_houkago_03.pdf
〈2018年8月21日時点〉
調査企画・分析メンバー
明石 要一 (千葉敬愛短期大学 学長)
都筑 学 (中央大学 教授 文学部長)
藤川 大祐 (千葉大学 教授)
佐藤 香 (東京大学 准教授)
西島 央 (首都大学東京 准教授)
木村 治生 (ベネッセ教育総合研究所 室長)
邵 勤風 (ベネッセ教育総合研究所 主任研究員)
土屋 利恵子(ベネッセ教育総合研究所 主任研究員)
橋本 尚美 (ベネッセ教育総合研究所 研究員)
木村 聡 (ベネッセ教育総合研究所 研究員)
満都拉 (ベネッセ教育総合研究所 特任研究員)
宮本 幸子 (ベネッセコーポレーション)
(11)高校データブック 2013 │ベネッセ教育総合研究所
URL http://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/kou_databook/2013/pdf/P34-51.pdf
〈2018年8月21日時点〉
Benesse教育研究開発センター・VIEW21編集長 小泉 和義